はじめに

国を挙げて SDGs を達成するため、国内における太陽光パネルの設置枚数が急増しました。その一方で、今後、大量に発生することが見込まれる使用済みパネルを適切に回収・処理できるかが問われています。

「ガラス to ガラス」の意味

ガラス to ガラスは、廃棄されたガラス製品のガラスを、加工して再びガラス製品へとリサイクルすることです。これまでガラス to ガラスはハードルが高いとされ、取り組まれてきませんでした。しかし、国連が 2022 年を「国際ガラス年」として定め、これまでのガラスの材料や応用の歴史を讃え、未来を見据えたさまざまなイベントや取り組みが催されました。

日本にはガラス大手があり、学術や研究でも高い水準にあり、この「国際ガラス年」に続いたイベントが日本で開催されました。その代表である AGC が、回収したカレット(破砕した状態のガラス)を板ガラスの製造に積極的に使うための取り組みをはじめていることで、ガラス to ガラスの可能性が見え始めました。

ガラス to ガラスの難所、特に太陽光パネルにおいての利用とは

太陽光パネルのガラスは、着色剤が含まれていないのでマテリアルリサイクルそのものは、技術的には比較的、実現しやすい可能性があるそうです。ただし透過率を向上する目的で製造時にアンチモンなどを加えています。アンチモンなどの含有量を正確に把握できていれば、ある程度の比率でカレットを新しい板ガラスの製造に使えそうなことがわかってきました。

実際に板ガラスの材料として再利用できるようにするためには、カレットの状態や成分などの情報の信頼性が重要になります。ここは製品のムラが少ないことはもちろん情報開示や情報へのアクセスのしやすさがカギになると言えるでしょう。

デジタル技術の利用

富士通では、ガラスリサイクルに関して、カレットの混合成分や比率、また製造時の CO2排出量の削減などといった指標を変数に、最適化を組むために、デジタル技術の利用が試みられているようです。

太陽光パネルリサイクル推進をするガラス再資源化協会の取り組み

全世界で見ると 2050 年における稼働済み太陽光発電の規模が、2016 年時点での予想からすでに約 3 倍に上振れしているとのデータがあります。今後もこの傾向は続くと予想されます。ガラス再資源化協会は、従来から注力してきた使用済み太陽光パネルの適正処理・リサイクル網の充実にも、引き続き取り組んでいくそうです。また、企業や地方自治体にも太陽光パネルの適正処理を働きかけてきたそうです。

その中で、東京の地方自治体は東京都の住宅への太陽光パネルの設置義務化などの一方、住宅から排出される使用済みパネルのリサイクルにも取り組み、例えば、太陽光発電設備高度循環利用推進協議会を組織しています。この協議会では、住宅から使用済みの太陽光パネルを撤去した事例の調査だけ
でなく、実際のリサイクルを通じてノウハウを蓄積したり、関連する情報を提供したりする方針です。これは、他の自治体にも広がるモデルになる可能性があるかもしれません。

まとめ

高品質の太陽光発電の設置が進むと同時に、廃棄されるパネルも今後は増えてくることでしょう。日本は世界の中で有数のガラス企業が多数ある国ですので、世界に対して新しい価値を発信する機会になりうるかもしれませんね。