はじめに

豊橋市の蔵精密工業は、創業 100 周年にあたる 2038 年までに事業活動におけるカーボンニュートラルを目指す「ムサシカーボンニュートラル宣言」を発表しました。国内外の各生産拠点に再エネ自家発電システムの設置を予定しています。その一環で、マイクログリッドの構築・運用に向けて、豊橋市および 9 事業者がコンソーシアム協定を締結したと発表しました。来年 4 月に運用を目指しているといいます。

マイクログリッドとは

マイクログリッド(Microgrid)は、分散型電力供給システムの一種であり、小規模な発電設備や蓄電池、電力需要を管理する制御システムなどを統合した電力システムのことを指します。従来の中央集中型電力供給システムでは、電力は大規模な発電所から送電線を通じて送られ、需要地に配電されています。

しかし、マイクログリッドは、電力需要地近くに小規模な発電設備や蓄電池を設置し、必要に応じて自給自足の電力供給を行うことができます。また、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電、地熱発電など、様々な発電源を組み合わせることができるため、地域のエネルギーミックスに合わせた柔軟な電力供給が可能となります。

マイクログリッドは、自然災害などの緊急事態時にも有効です。従来の中央集中型電力供給システムでは、送電線が倒壊したり、発電所が被災したりする場合には、電力供給が途絶えてしまうことがあります。しかし、マイクログリッドでは、発電設備や蓄電池が地域内に分散して設置されているため、災害時にも一部の電力供給が維持されることが期待されます。

また、マイクログリッドは、エネルギーの省エネルギーや CO2排出削減などの環境負荷低減にも有効です。分散型電力供給システムの採用により、発電や送電のロスを減らすことができるため、省エネルギー効果が期待できます。また、再生可能エネルギーの導入が進められ、環境負荷低減につながることが期待されます。しかしマイクログリッドには課題もあります。

マイクログリッドの課題

マイクログリッドの普及には、以下のような課題が存在します。

  1. コストの高さ:マイクログリッドの構築には、発電設備や蓄電池、制御システムなどの高価な設備が必要となります。また、マイクログリッドの構築には、従来の中央集中型電力供給システムと比較して、専門知識を持つ技術者が必要となることもあります。
  2. 電力需要の予測の難しさ:マイクログリッドでは、電力需要を的確に予測することが重要となりますが、地域の変化や気象条件によって需要が変動することが予測困難な場合があります。このため、需要予測に誤差が生じる可能性があり、電力の供給量を調整することが困難になることがあります。
  3. グリッドへの接続は技術的に難易度が高いと言われます。マイクログリッドは、地域内で独立した電力供給を行うことができますが、既存の中央集中型電力供給システムとの接続が必要な場合もあります。しかし、グリッドへの接続には、技術的な課題や法的な問題があるため、接続が困難となることがあります。
  4. マイクログリッドは、小規模な電力供給システムであるため、1 つの発電設備や蓄電池の故障や停止によって、電力供給が途絶える可能性があります。このため、信頼性の確保が必要となります。
  5. マイクログリッドは、分散型電力供給システムの 1 つであり、まだ普及していないため周知度が低いことが課題の 1 つです。マイクログリッドのメリットやデメリットについて、十分な情報がないこと、住民の信頼を得るのには事例が少ないことも課題です。

まとめ

マイクログリッドは経済産業省から補助金が確保され、マイクログリッド構築の手引きなども作られ、事業支援されているようです。その事業に参入する企業に利益があまりないなど課題はあり、事業者からのヒアリングも行っている最中のようです。是非動向をチェックしていきたいところです。