はじめに

欧州委員会は、消費者環境に関する広告や表示について、科学的根拠の明示を義務化する法案を発表しました。同法案は、製品が「環境にやさしい」と表示される際には、その表示に対して根拠を示す必要があると規定しています。具体的には、消費者が信頼できる情報に基づいて商品の環境性能を比較することができるよう、製品の環境スコアを提示することが求められています。

法案の内容

同法案では、環境スコアについての勝手な評価を禁止することも規定されています。これは、環境スコアが企業や生産者によって自己申告制であるため、評価が公正であることが保証されていないことに対する懸念が背景にあるからです。

欧州委員会は、同法案によって、消費者が環境に配慮した製品を選択するための正確な情報を提供することで、消費者にとってより環境に配慮した選択が可能になると期待しています。なお、同法案は欧州委員会が提出したものであり、EU議会や加盟国の承認を経る必要があり、承認された場合、EU加盟国全域で適用される見込みです。

この法案の制定により、企業や生産者は環境に配慮した製品を提供することが求められるだけでなく、その製品が環境に配慮したものであることを証明するための科学的な根拠を示す必要があります。これにより、製品の環境性能についての情報がより信頼性が高いものとなり、消費者の環境に配慮した選択が促進されることが期待されます。

また、環境スコアの勝手評価の禁止によって、企業や生産者が自己申告する環境スコアの信頼性が向上すると同時に、競合他社との公平な比較が可能になることで、企業間の競争が促進されることも望めるでしょう。

また、EUは今後、企業に対して環境情報を提供することを義務付ける計画を進めています。今後、環境に対する企業の影響を示す指標である「EU環境フットプリント」が発表される予定であり、企業はこれに基づいて自社の環境性能を評価し、報告することが求められます。さらに、本年2023年中に、企業が提供する環境情報について、独立した第三者の検証が必要となる見込みです。

規制の効果

このように、EUは従来の自主的な取り組みではなく、科学的根拠に基づいた規制や指標の導入によって環境問題に対する取り組みを強化していく方針です。企業も環境情報の提供や報告について、より責任ある取り組みが求められることとなるでしょう。

今後、EUが推進する環境に関する規制や指標の導入が、他の国や地域にも波及する可能性があります。企業は、環境問題に対してより積極的に取り組み、規制や指標の導入に対応することが求められます。また、消費者も環境に対する意識が高まっており、企業が環境情報を提供することによって、商品選択において環境性能を考慮することができるようになります。

さいごに

このEUの動きは、消費者保護と環境保護の点から大変意義深いものだと思われます。消費者が商品やサービスを選ぶ際に、その環境への影響や社会的な観点からの評価ができることは、消費者の意識向上につながり、また、企業にも環境や社会的責任を持つことを促すことになるでしょう。

ただ、科学的根拠が必要とされることにより、企業が環境負荷を低減するための取り組みをする上で、より多くのコストや時間がかかる可能性があるという点は課題かもしれません。また、環境スコアの勝手な評価を禁止することにより、情報の選択肢が制限されることがあるため、評価基準が公正であることが重要です。

総じて言えることは、企業が環境や社会に配慮した取り組みをすることは、今後ますます重要になっていくということです。消費者の意識の高まりや政府の動きによって、企業はより責任ある行動を求められることになるでしょう。