はじめに
COPという言葉を最近報道で耳目に触れた事があるのではないでしょうか。
COPとは、conference of the partiesの略で、国連の気候変動に関する集会のことを指します。
2022年11月6~18日の間、地球温暖化対策を議論する国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が、エジプト・シャルムエルシェイクで開かれています。
COP27での最大の焦点は、異常気象によって甚大な災害被害に見舞われている途上国への支援策です。ロシアのウクライナ侵略の影響で、各国はエネルギー源の安定確保に苦心しており、温室効果ガス削減に向けて足並みをそろえられるかも問われています。
本記事では、2022年3月に国連が発表した報告書を参照しつつ、気候変動による災害の経済的損失についてみていきたいと思います。
気候変動に関する国連の報告
国連の世界気象機関(WMO)は、2022年3月23日(世界気象の日)、洪水や干ばつ、熱波、暴風雨などの危険な気象状況が近づいていることを人々に知らせる「早期警報システム」の5年以内の整備を推進することを発表しました。
この発表時の国連のグテーレス事務総長の言葉を一部抜粋します。
参考サイト:https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/43718/
人為起源の気候崩壊が今、あらゆる地域に被害を及ぼしています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書には、すでに起きている苦難について詳述されています。
人類の半数が、すでに危険地域にいます。
地球温暖化が進むたびに、異常気象は頻発化、激甚化します。
私たちが地球の気温上昇を1.5℃に抑えなければならない理由はここにあります。
1.5℃を維持するためには、2030年までに世界の温室効果ガス排出量を45%削減し、今世紀半ばまでにカーボンニュートラルを達成する必要があります。
~~中略~~
今日、後発開発途上国や小島嶼開発途上国に住む人々を中心に、世界人口の3分の1が、
未だに早期警報システムの対象になっていません。
アフリカの状況はさらに深刻で、60%の人々が対象から外れています。
これは、気候への影響がさらに悪化することが確実な中、受け入れられることではありません。
早期警報と早期行動は、人命を救うのです。
そのために、私は本日、地球上の誰もが5年以内に早期警報システムによる保護を受けられるよう、国連が率先して新たな行動を起こすことを発表します。
私は、この取り組みを主導し、今年後半にエジプトで開催される次の国連気候変動枠組条約締約国会議において行動計画を提示するよう世界気象機関(WMO)に要請しました。
私たちは、すべての人々のために予測する能力を高め、行動力を強化しなければなりません。
~~後略~~
日本では、気象庁が気象災害に対してさまざまな警報を発令していますが、こうしたシステムを全世界に拡大し、気候変動に対する適応を進めていくというものです。
気候変動問題は現在、世界中のあらゆる地域に損害を与えています。日本においては台風の大型化をはじめ、極端な降雨などによる災害が発生していますが、海外においても干ばつによる山火事や大雨による洪水などさまざまな気象災害が発生しています。気候変動が生態系に影響を与え、海から魚が獲れなくなってしまい、このままでは食卓に魚がなくなるのも時間の問題かもしれません。
気候関連の災害と経済的損失
2021年のWMOの災害報告によると
過去50年間で、気象関連の災害は平均して毎日発生、気候変動による死者は1日あたり115名、経済的損失は1日あたり2億200万ドル(約320億円)になるとのことです。さらに、極端な気象災害はこの50年間で5倍に増加しているとの事です。
同じ2022年3月23日、WMOの事務局長であるペテリ・ターラス氏は以下のように述べています。
気候変動による災害の増加は、多数の持続可能な開発目標の実施を危険にさらして
います。緩和(温室効果ガスの削減)に加えて、気候変動に対する適応に投資する
ことがますます重要になっています。気象、水、気候の早期警告サービス、および
関連する監視インフラを改善することで、投資の利益は最大化します。特に後発開発
途上国や小島嶼国において、サービスおよび関連インフラを整備するためには、
今後5年間で15億ドルを投資する必要があります。
この投資金額は、過去50年間の平均的な経済的損失の2週間分とほぼ同じです。とてつもなく大きな損失がこの50年間で発生し続けてきたことと、その対策にも大きな費用が必要な事が分かります。
早期警報と早期行動
報告書では、気象災害を24時間前に警告することで被害を30%削減でき、途上国でシステム構築に8億ドルを投資することで年間30~160億ドルの損失が回避できるとしています。
導入が進められるシステムは、危険な気象状況が近づいていることを人々に知らせ、政府やコミュニティ、人々への影響を最小限にするためにどのように行動すればいいのかを知らせる統合システムだといいます。
システムでは、陸と海の大気の状態をリアルタイムで監視し、コンピュータ数値モデルを使用して気象災害などを効果的に予測します。具体的には、例えば暴風雨による影響がどのようなリスクをもたらすのかを示すといったもので気象災害を最小限にするための、事前の対応計画なども含まれます。
COP27
さて、そういった中、11月6日に開幕したCOP27では、異常気象の被害が多い途上国に対して先進国が支援を拡充できるかが焦点となっている他、気温上昇の抑制へ当面2030年までの対策の強化も議論されます。
議長国エジプトによると、4万人超が参加することになっています。7~8日の首脳級会合は約100カ国・地域の出席が見込まれている他、14日からは各国の閣僚が集まり、合意に向けた詰めの交渉に入ります。
2021年10~11月に英グラスゴーで開いたCOP26では、地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」に基づき、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えることを目指すと合意しました。石炭火力発電の段階的な削減でも一致しています。
おわりに
COP27の議長を務めるシュクリ・エジプト外相はCOP26で約束した合意を「実行に移すCOPにする」と意気込んでいます。現実には、ウクライナ危機でエネルギーの供給不安が広がり、気候変動対策の優先度が後退しているとの懸念が根強くあります。世界が分断を超えて温暖化問題に向き合う契機とできるかどうか、注目していきたいですね。また、エナジーシェアーズでは、環境に貢献するクリーンな投資を実現し、投資家に高利回りで還元する投資プラットフォームです。ぜひチェックしてみてください。