AI人工知能)の技術革新と普及が進み、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。特に生成AIが登場してからは、様々な分野において変革をもたらしているでしょう。その一方で、これらの技術の利用拡大により、電力需要の増加が懸念されています。この記事では、生成AIによる電力需要の増加や電力不足への対策、再生可能エネルギーの可能性について、ご紹介していきます。

生成AIによる、電力需要の増加

生成AIは、コンピューターが学習したデータをもとに、新しいコンテンツを生成するAIです。この生成AIの利用増加とあわせて、その運用に必要な電力消費量の増加が見込まれています。

例えば、生成AIの代表的なChatGPTは、1回の質問で約2.9Whの電力量を消費し、Google検索の電力量(約0.3Wh)の約10倍に相当するそうです。

参考:EPRI 人工知能とデータセンターのエネルギー消費の分析(原文英語:2024年5月28日)

また、AIの普及によってデータセンターの需要も急増しており、大量の電力が消費されています。

国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2022年に世界全体で約460TWhの電力がデータセンターで消費されていましたが、2026年にはその倍以上の約1,000TWh約1兆kWh)に達する可能性があります。この数値は、日本全体の年間総消費電力量に匹敵するとのこと。

参考:NTT東日本 AIが奪うのは仕事ではなく電力?生成AIのエネルギー事情(2024年2月9日)

日本でもデータセンター等の需要増加で、2050年までに電力生産量が35%〜50%増加するとの予想です。2020年代に予測されている電力供給量は約1兆kWhであり、それを1.35兆〜1.5兆kWhに増やす必要があると考えられています。

2024年は過去20年間で電力需要の増加が最も伸びる見通しだそうで、電力を安定供給するために、再生可能エネルギーの生産増加や電力確保への投資が必要になることも示唆されています。

参考:Reuters 日本はAI、チップ工場の需要を満たすために2050年までに電力出力を大幅に増加する必要があると見ている(原文英語:2024年5月14日)

電力不足への対策

電力需要の増加に対応するためには、供給需要の両方から対策が必要です。供給では、今ある設備の生産効率化や再生可能エネルギーの導入拡大が考えられます。また需要では、エネルギー効率の向上や省エネへの取り組みなどが効果的でしょう。

石油や天然ガスなどの資源が少ない日本のエネルギー自給率13.3%で(2021年度)、他の主要国の中でも低い水準です。エネルギー自給率が低い日本において、再生可能エネルギーは国内で生産できる重要なエネルギー源で、エネルギー自給率の向上や温室効果ガスの削減に寄与します。

今後のエネルギー政策の方針として、再生可能エネルギーは主力電源に位置づけられています。2030年度の電源構成における再生可能エネルギーの比率は、36%~38%に引き上げられ、2040年度には40%〜50%に引き上げるなど、高い目標が設定されました。再生可能エネルギーの導入は、これからますます進んでいくと考えられます。

参考:日本電機工業会(JEMA)2030年における再生可能エネルギーの導入見通し(2024年7月19日)

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【知っておくべき、日本が抱える問題】日本のエネルギー自給率

電力を消費する私たちも、エネルギーを効率よく使う「省エネ」に取り組んでいく必要があります。個人では効果がないように思えますが、全世帯で取り組めば大きな成果になるでしょう。

家庭でエネルギーを多く使うものは、エアコンなどの空調機器、冷蔵庫や洗濯機などを動かすための動力や照明器具、テレビなど。家庭のエネルギー消費の半分以上は電気だそうで、家庭で省エネを進めるためには、電気の使い方を見直すことが大切です。

下記のサイトも参考にしながら、電力消費と光熱費の削減に取り組んでいきましょう!

参考:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネって何?

 再生可能エネルギーの可能性

再生可能エネルギーには、太陽光風力水力地熱などがあり、化石燃料に比べて環境への影響が少ないとされています。

例えば、アイスランドでは地熱エネルギー等を活用し、電力の85%以上を再生可能エネルギーでまかなっています。また、ウルグアイも再生可能エネルギーの導入を積極的に進めており、電力の98%近くを再生可能エネルギーで供給しているそうです。世界の国々では再生可能エネルギーの導入がかなり進んでおり、驚きの事例です!

また国だけでなく企業や組織などのビジネス面でも、自家発電設備の導入で太陽光パネル風力タービンなどを設置するなど、多種多様な方法で再生可能エネルギーの活用が進められています。こうした取り組みは、環境負荷の低減だけでなく、ブランド価値の向上や新たな収益の創出にも貢献するでしょう。

参考:IBM 持続可能な未来にエネルギーを | 再エネの実例と使用例(2024年5月1日)

再生可能エネルギーがもたらすものは数多くあり、持続可能な未来と社会をつくるために必要不可欠な要素だと思います。

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【地球温暖化対策】再生可能エネルギーの重要性と投資チャンス

まとめ:AI時代と未来への備え

AI技術や生成AIの普及は、私たちの社会に大きな変革をもたらしていますが、その裏では電力需要の増加という課題が浮き彫りになっています。

ChatGPTなどの生成AIは膨大な電力量を必要とし、データセンターの電力消費も急激に拡大しています。日本では、電力供給の安定化に向けて再生可能エネルギーの導入が重要視され、2030年度には電源構成の36%~38%を再生可能エネルギーでまかなう目標が掲げられました。

再生可能エネルギーは、エネルギー自給率の向上や環境負荷の低減に貢献するだけでなく、持続可能な社会づくりにも欠かせない存在です。また、企業や家庭におけるエネルギー効率の向上や省エネの取り組みも重要で、私たち一人ひとりが意識的に行動することで大きな成果に繋がっていくと思います。

今後は技術革新によるエネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの普及、そして企業や個人の協力が必要です。AI時代の恩恵を最大限に受けつつ、電力不足への対策と持続可能な未来への備えを進めていきましょう!