ESG投資とは、環境、社会、企業統治の観点から投資先の企業を選ぶ手法です。SDGsが叫ばれる世の中で市場が拡大しているため、将来的にも期待できる手法でもあります。とはいえ、投資の手法にはメリットがある反面問題点もつきものです。
そこでこの記事では、ESG投資について詳しく解説します。今現在、自社にESG投資を取り入れるべきか迷われている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 1 ESG投資とは
- 2 Eの意味
- 3 S の意味
- 4 Gの意味
- 5 ESG投資の歴史
- 6 ESG投資の手法
- 7 ティブ・スクリーニング
- 8 ポジティブ・スクリーニング
- 9 規範にもとづくスクリーニング
- 10 ESGインテグレーション
- 11 サステナブル・テーマ投資
- 12 インパクト投資
- 13 エンゲージメント・議決権行使
- 14 ESG投資のメリット
- 15 今後の市場拡大に期待できる
- 16 長期運用によりリスクを軽減できる
- 17 持続可能な社会の実現へ貢献できる
- 18 ESG投資の問題点
- 19 短期的なリターンは期待できない
- 20 企業からの情報開示が十分ではない
- 21 グリーンウォッシュ企業が存在する
- 22 ESG投資の始め方
- 23 株式
- 24 投資信託・ETF
- 25 債券
- 26 クラウドファンディング
- 27 まとめ
ESG投資とは
ESG投資とは投資の手法です。一般的な投資先の選定方法とは、E、S、Gの3つの要素を意識する点が異なります。
では、3つのE、S、Gにはどのような意味があるのでしょうか。この章では、それぞれについて詳しく解説します。
Eの意味
Eは、環境という意味を表す英単語の「Environment」の頭文字をとったものです。つまり投資先の企業が、環境に対して配慮しているかを見ます。
たとえば、川や海の水質を保つために汚染対策をしているのか、産業廃棄物の削減に対する意識はどうなのか、気候変動にはどう対応するのかなどです。環境にやさしい経営方法を採用している企業は、これから持続的な成長を見せるだろうという考え方をもとにESG投資の要素として組み込まれています。
S の意味
Sは、社会を意味する「Social」の頭文字をとったものです。つまり、投資先の企業が、社会の一員としてどのように働いているか、どのように責任を果たしているかを見ます。
たとえば、多様性の変化に柔軟に対応しているか、働き方改革に対して積極的に目を向けているか、雇用する人材が偏っていないかなどです。目まぐるしい変化を遂げる社会に対して積極的に向き合い柔軟に対応できる企業は、今後も成長していく可能性が高いという考えのもと、ESG投資の要素として取り入れられています。
Gの意味
Gは、企業統治を意味する「Governance」の頭文字をとったものです。企業統治とは、企業内の秩序を保つために、不正やコンプライアンス違反などを防止する仕組みを指します。したがって、会社が企業統治を行うためにどのような体制をとっているのか、どのように取り組んでいるのかを見ます。
たとえば、透明性のある経営、従業員や役員への監視体制、株主との関係性、報酬の妥当性などです。コンプライアンスが厳しくなる現代において、企業統治がきちんとしている企業は今後も成長する見込みがあるという考えのもと、ESG投資の要素として取り入れられています。
ESG投資の歴史
1920年ごろに「企業の社会的責任」という考え方が広まりました。その結果、社会的責任投資を行う機関投資家が現れます。
社会的責任投資とは、企業の社会的責任に対する評価をもとに行う投資です。具体的には、タバコやギャンブル、アルコールなどに関する企業への投資を禁止するという投資手法です。
時代が進み1960年ごろになると、社会や環境に関する関心が徐々に高まってきます。その後2006年には、国連責任投資原則がニューヨーク証券取引所で公表されました。
国連責任投資原則とは、ESGの観点をもとに投資を行うことを投資家に対して勧めるガイドラインです。ここで、ESGは企業の価値を決める際に重要視されるべきだという考えが広まりました。
日本では、少し遅れて2015年ごろから広がり始めます。国の代わりに年金積立金の管理や運用を行うGPIFが、国連責任投資原則にサインしたことがきっかけです。GPIFがサインした理由は、2015年の国連サミットにて、SDGsの達成が挙げられたからです。
SDGsを達成するためには、目先の利益よりもこれから先、長い間活動できる企業になることが欠かせません。こうした背景から、GPIFが投資にESGを取り入れたというわけです。
ESG投資の手法
一口に「ESG投資」と言っても、その手法には以下のような種類があります。
・ネガティブ・スクリーニング
・ポジティブ・スクリーニング
・規範に基づくスクリーニング
・ESGインテグレーション
・サステナブル・テーマ投資
・インパクト投資
・エンゲージメント
・議決権行使
この章では、それぞれの手法について解説します。
ティブ・スクリーニング
ネガティブ・スクリーニングとは、ネガティブな印象を受ける企業や業界を避けて投資する方法です。1920年ごろから使われ始め、ESG投資の種類のなかで最も昔から用いられている手法と言われています。
この手法で避けるべきネガティブな印象を受ける企業とは、人間や社会に悪い影響を及ぼす事業をしている企業や人権侵害、倫理観の欠如した実験を行う企業です。具体的には、タバコや武器製造、生命を用いた実験を行う企業などが挙げられます。なお近年では、環境汚染につながる事業を行う企業も投資対象から除外する傾向にあります。
ポジティブ・スクリーニング
ポジティブ・スクリーニングとは、ポジティブな印象を受ける企業や業界に投資する手法です。ポジティブな印象を受ける企業には、ESG評価の高い企業などの人間や社会に対してよい影響を与えるような企業が挙げられます。
たとえば、再生可能エネルギーに関する事業を行う企業や多様性のある社会を見出すために尽力している企業、コンプライアンス違反に対して厳しく取り締まっている企業などです。なお、ポジティブな印象を受ける企業のなかでも、ESG評価が特別に高い企業に投資する手法を、ベスト・イン・クラスと呼びます。
規範にもとづくスクリーニング
規範にもとづくスクリーニングは、国際的な違反を犯している企業や業界を避けて投資する手法です。避けるべき企業は、いくつかの団体が定めたESGに関する規範やルールをもとに選びます。参考にする規範やルールを定める団体の例を挙げると以下のとおりです。
・国際労働機関
・OECD多国籍企業行動指針
・国連グローバル・コンパクト
1からESGの評価が高い企業を見つけるのが難しい人でも、上記で定められたルールや規範をもとに企業を選ぶことで、ESG評価が高い企業を自然に選べます。複数あるルールや規範のなかからどれかひとつを選んで参考にするのが一般的です。選ぶルールや規範は投資家自身が選択します。
なお、規範にもとづくスクリーニングは、国際規範スクリーニングとも呼ばれます。
ESGインテグレーション
ESGインテグレーションとは、非財務情報であるESGにくわえて、従来の投資方法のように財務情報を参考に投資先を選ぶ手法です。
ESGの観点も意識しつつ、収益性も判断材料にするため、多くの投資家に採用されています。また、国連責任投資原則に記載されている手法で、日本やアメリカなどでも人気を博しています。
サステナブル・テーマ投資
サステナブル・テーマ投資とは、ESGのなかでもサステナビリティ(持続可能性)な社会の実現に関連するテーマに尽力している企業や業界を投資先として選ぶ方法です。
サステナビリティに関連するテーマとしては、再生可能エネルギーやグリーンテクノロジー、持続可能な農業、ダイバーシティなどが挙げられます。SDGsとの相性のよさもあって、日本では採用される機会が増えつつあり、これからも注目が期待される手法です。
インパクト投資
インパクト投資とは、社会や環境に関する問題や課題に取り組む企業や業界を投資先に選ぶ手法です。たとえば、貧困層や低所得層のために医療や教育などを提供している業界や再生可能エネルギーの開発に尽力している企業などが投資先として選ばれます。
企業がESGに対してどの程度貢献しているかを評価する際は、データを用いて行われるのが一般的です。社会や環境への配慮と収益性の両方を意識しているため、あらゆる方面にメリットのある手法と言えます。
エンゲージメント・議決権行使
エンゲージメント・議決権行使とは、投資家がその企業の株主となり、ESGへの取り組みを促す手法です。たとえば、株主として社長と話し合ったり、株主総会で意見を述べたりすることが挙げられます。
もし、企業がESGに対して消極的であれば、投資先から除外するのもひとつの方法です。こうした特徴から、エンゲージメント・議決権行使は、投資能力だけではなく、幅広い知識やスピーチ力、プレゼン力などが欠かせません。
ESG投資のメリット
ESG投資のメリットは以下の3点です。
・今後の市場拡大に期待できる
・長期運用によりリスクを軽減できる
・持続可能な社会の実現へ貢献できる
それぞれ、詳しく解説します。
今後の市場拡大に期待できる
ESG投資は、今後の市場拡大に期待できる点がメリットです。その証拠に、諸外国で莫大な資金が投資されています。たとえば、アメリカはおよそ17兆ドル、ヨーロッパはおよそ12兆ドルの資金を投じているのが現状です。
とはいえ、日本をはじめとして、オーストラリアやカナダでは、まだ多くの資金が投じられているとは言えません。しかし、これからESG投資の重要性や人気が増していけば、規模はさらに拡大するでしょう。このように市場に伸び代がある点は、ESG投資のメリットだと言えます。
長期運用によりリスクを軽減できる
ESG投資は、リスクを軽減しつつ投資ができるのがメリットです。なぜなら、ESG投資は必然的に長期運用となるからです。
記事の冒頭で説明したとおり、ESGは長い時間をかけて持続可能な社会を実現することをひとつの目標としています。したがって、ESGに取り組む企業は長い期間をかけて成長していくことになります。
そうした企業に投資するということは、市場の伸びを長い目で見ることになるでしょう。投資において、短期で利益を出す場合と長期で利益を出す場合では、後者の方がリスクは小さい傾向にあります。つまり、ESG投資を行うということは、比較的リスクの少ない投資ができるということです。
持続可能な社会の実現へ貢献できる
ESG投資は、ESGの要素をもとに投資先を選ぶ手法です。つまり、ESG投資を行うことで、持続可能な社会の実現に取り組んでいる企業に投資できます。
たとえば、持続可能な社会を実現する活動の一環として、環境汚染物質の削減に尽力している企業に投資するとします。投資した資金は、環境汚染物質の削減に使われるため、投資家は間接的に持続可能な社会の実現に貢献したことになります。投資額が多ければ、その分企業の活動も活性化するでしょう。
ESG投資の問題点
ESG投資にはメリットもある反面、以下のような問題点もあります。
・短期的なリターンは期待できない
・企業からの情報開示が十分ではない
・グリーンウォッシュ企業が存在する
この章では、ESG投資の問題点について解説します。
短期的なリターンは期待できない
ESG投資では、短期的なリターンは期待できません。なぜなら、ESG投資での投資先となる企業は、短期で急激に成長するのではなく、長期的にゆっくりと成長するからです。
短期的に取引を行っても、成長の幅が少ないので利益にはつながらないでしょう。したがって、短期的な投資を繰り返す投資家には向いていません。
補足として、ESG投資の種類のひとつであるESGインテグレーションを用いることで、短期的な投資でも利益を確定できるケースがあります。とはいえ、ESG投資は長期的な運用を前提とした手法なので、かならずしも成果が出るとは限らないことを覚えておきましょう。
企業からの情報開示が十分ではない
現在、企業から開示されているESGに関する情報は多くありません。そのため、投資先を決めるにあたって判断材料となる情報が足りない可能性があります。仮に、十分な情報を揃えられたとしても、揃えるまでに多くの時間や手間がかかるケースもあるでしょう。
その理由としては、歴史が浅いことが挙げられます。ESG投資が日本で広がり始めたのは2015年ごろです。歴史的にはまだ10年も経っていないため、投資家も企業も環境を整えている途中だと考えられます。
とはいえ、上場企業をはじめ、複数の企業はESGに関する情報を発信し始めています。時代が進めば、多くの企業が情報を発信するようになるかもしれません。
グリーンウォッシュ企業が存在する
ESG投資では、投資先にグリーンウォッシュ企業が存在する恐れがあります。グリーンウォッシュ企業とは、環境への配慮をしていると装って、実際には何の取り組みもしていない企業です。
たとえば、環境に配慮していると勘違いするような広告を出している企業などが挙げられます。偽装を行う理由は、世間体をよくしたり投資家から投資してもらったりするためです。こうした企業に投資しても成長が見込めないので、どれだけ長い目で見ても利益を得ることはできません。
現在では、情報の開示も少ないことが相まって、グリーンウォッシュ企業を見抜くのは難しいです。そのため、あらゆる面からその企業を調べて、本当にESGに取り組んでいるのかを調べてから投資を行うようにしましょう。
ESG投資の始め方
ESG投資を始める方法には、以下のような方法があります。
・株式
・投資信託・ETF
・債券
・クラウドファンディング
株式
株式投資とは、企業が発行する株式を購入し変動する価格の差額で利益を得たり、配当金を受け取ったりする方法です。ESG投資を株式投資で行う場合は、本記事で紹介した手法をもとに、株式を購入する企業を選びましょう。あとは市場を見つつ、任意のタイミングで売買を行います。
投資に正解はないため結論づけることはできませんが、ESG投資は長期運用に向いている手法です。したがって、短期間で売買を繰り返すのではなく、長期的に企業の成長を観察する必要があります。
投資信託・ETF
投資信託・ETFとは、投資家から集めた資金をひとつにまとめて、専門家が株式や債券に投資して運用する方法です。
専門家がどこに投資するかはあらかじめ知ることができ、ESGに取り組む企業に投資する専門家を選ぶことで、投資信託でESG投資を行えます。注意点としては、専門家が運用してくれるとはいえ、利益が確定するものではないので注意しましょう。
債券
債券投資とは、債券を購入して行う投資です。債券とは企業が発行するもので、購入することで企業に対して資金を貸していることになります。一定期間保有しておくと利息が発生し、債券購入費用を返還してもらうとともに利息も受け取れます。
ESG投資を債券投資で行うということは、ESGに取り組んでいる会社から債券を購入するということです。しかし、会社の経営状況が悪化するなどの理由で、元本の返還や利息の支払いが行われないケースがあります。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネット上で事業内容を発信することで、支援したい人から資金を集める仕組みです。ESGに取り組む企業が実施するクラウドファンディングに出資することで、ESG投資をクラウドファンディングで行えます。
ESG投資による利益によって、出資者たちへの分配金額が変動する仕組みです。出資金額が目標値まで達しなかったり思うように利益が伸びなかったりすると、利益を得られないケースもあります。
ESG投資のメリットや問題点を解説しましたが、こちらではESG投資と関連してクリーンエネルギーへの投資についても解説していますので、合わせてご覧ください。
まとめ
ESG投資とは、環境、社会、企業統治の要素を参考に、投資する事業を選ぶ方法です。株式投資や債券投資などで始められます。
また、ESG投資にはさまざまな手法があり、それぞれ投資先を選ぶ基準が異なったり、向いているケースが異なったります。そんなESG投資は、今後市場が拡大することやリスクを軽減できるといった点がメリットです。
しかし、短期的な投資には向かなかったり、企業の情報開示が不十分だったりするというデメリットもあります。
もし、ESG投資を検討されているのであれば、エナジーシェアーズまでお問い合わせください。
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