はじめに

11月6日に始まる第27回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27)を前に、欧州連合(EU)が連携を強めています。10月25日に2030年以降の新築建築物をゼロエミッションとすることで合意したほか、同27日には35年にガソリン車などの販売を事実上禁じることでも意見がまとまりました。脱炭素への「足踏み」批判が米中などから出る中、ルールメーカーとしての戦略を明確にする狙いがありそうです。

国連環境計画(UNEP)は、新たに発刊した報告書「Emissions GapReport 2022: The Closing Window – Climate crisis calls for rapidtransformation of societies」において、各国が気候変動対策の政策を強化しない場合、21世紀末までに世界の平均気温は2.8℃上昇すると警告し、気候変動対策はますます急務になっています。海から魚が獲れなくなってしまい、食卓に魚がなくなるのも時間の問題かもしれません。

本日は、COP27を迎える前のEUの気候変動に関する動きを見ていきましょう。

EUの狙いと「Fit for 55」

EUは、2022年末までに環境政策パッケージ「Fit for 55」に署名する予定です。30年までに温暖化ガスの排出量を1990年比で少なくとも55%削減し、50年までに気候中立(温暖化ガスの実質排出ゼロ)を達成するための包括的な政策パッケージのことです。

この「Fit for 55」のパッケージには排出量削減を目的としたさまざまな法律案が含まれています。

30年以降、新規の建築物をゼロエミッションに

そのひとつがガソリン車規制です。欧州理事会と欧州議会は、2020年10月27日、乗用車と小型商用車のCO2排出性能基準の厳格化で合意しました。2030年までに新車として販売される乗用車のCO2排出量を21年と比較して55%削減します。小型商用車は50%削減です。そのうえで、2035年には内燃機関を使った自動車のEU域内での販売を事実上禁止します。

こうした動きを織り込むかたちで独フォルクスワーゲン(VW)、米フォード・モーター、 英ジャガー・ランドローバーは、2035年より前にヨーロッパでのガソリン車とディーゼル車の販売を停止するとすでに発表しています。欧州自動車工業会(ACEA)の会長もつとめる独BMWのオリバー・ツィプセ最高経営責任者(CEO)は「これは欧州こそが世界で最初に完全な電化に向かうことを示すものだ」と述べました。 「Fit for 55」では、建物のエネルギー性能に関する規則でも担当相レベルでの合意がなされました。閣僚たちは、2028年以降に建てられる新しい公共建築物はゼロエミッションを求めるとしました。そのうえで2030年以降、すべての新しい建築物はこの基準を満たすべきだと結論付けています。既存の建物についてはEU加盟国がエネルギー利用の最低基準を導入し、改修を促したうえで基準を満たせない建物を徐々に排除していくことになります。

EUが世界にリーダーシップを示す

相次ぐ合意からは、脱炭素に対するEUの対外方針を明確にする思惑が見て取れます。2020年10月24日、ルクセンブルクで開かれた環境相会合では、COP27に向けた共同交渉の姿勢で合意がありました。ウクライナでの戦争がガスの調達政策に課題を投げかけたとはいえ、気候変動にかかわる公約は後退させないというのがEUの立場です。

欧州理事会の議長国であるチェコのアンナ・フバーチュコバー環境相は「EUは常に気候変動対策の最前線にあり、今後も模範を示してリードしていく」と述べました。姿勢の合意はEUが「その野心に真剣であることを証明するもの」とフバーチュコバー氏は強調しました。

欧州委員会の環境政策担当、フランス・ティメルマンス上級副委員も同様の立場です。「ウクライナ戦争から導き出されたひとつの結論は、エネルギー転換を加速させる必要があるということだ。温暖化ガスの排出量はより速く削減されるだろう」と述べました。

ルクセンブルクの会合で、EU加盟国は、パリ協定で定められた気温上昇をセ氏1.5度以内に抑える目標を達成するためにはすべての国で排出削減目標を増やさなければならないことを確認しました。国連環境計画(UNEP)が10月27日に発表した「エミッション・ギャップ・リポート2022」によると気温上昇を1.5度以内にとどめるには、世界は30年までに温暖化ガスの排出を45%削減する必要があります。2度以内の場合は30%の削減が必要となります。

ブリュッセルの世界自然保護基金(WWF)欧州政策事務所のシャーリー・マシソン氏は「『世界レベルでリーダーシップを示す』というEUの野心を示すもの」と述べました。

これらのEUの動きから、EUが協調して世界における脱炭素を推進するのみならず、世界の脱炭素をリードしていこうという姿勢が見て取れますね。

おわりに

如何でしたでしょうか。EUでは各国が協調して脱炭素の取り組みをリードしていこうという強い意思を感じ取れます。11月6日に開幕するCOP27では、日本がどのようなプレゼンスを発揮していくのか、注目していきたいですね。また、エナジーシェアーズでは、環境に貢献するクリーンな投資を実現し、投資家に高利回りで還元する投資プラットフォームです。ぜひチェックしてみてください。