はじめに
2023 年 1 月 17 日から 19 日にかけて ISSB はフランクフルトにて会議を行いました。IFRS
サステナビリティ開示基準に関する ISSB の最終的な決定は、IFRS 財団の「デュープロセ
スハンドブック」に示されているとおりに正式に書面投票が行われる予定です。
IFRS 財団とは?
国際会計基準(IFRS)の策定を担う民間の非営利組織です。ロンドンに本部があります。
世界の金融市場に長期的な安定をもたらし公共の利益に貢献することを目的に、2001 年に
設立しました。国や地域、会計事務所からの資金拠出によって成り立ちます。独立性を維
持するため、基準開発では透明性を重視していると言います。基準の設定から管理に至る
すべてのプロセスで意見募集を行い、会議も一般に公開しています。
そもそも非財務情報である ESG 情報とは?
「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭
文字を取って作られた言葉です。近年では、この三つの観点から企業を分析して投資する
「ESG 投資」が注目されていました。具体例は以下の通りです。
・環境(E)
二酸化炭素(CO2)排出量の削減、廃水による水質汚染の改善、海洋中のマイクロプラス
チックといった環境問題対策。再生可能エネルギーの使用や生物多様性の確保など
・社会(S)
適正な労働条件や男女平等など職場での人権対策。ダイバーシティ、ワーク・ライフ・バ
ランス、児童労働問題、地域社会への貢献など
・ガバナンス(G)
業績悪化に直結するような不祥事の回避、リスク管理のための情報開示や法令順守。資本
効率に対する意識の高さなど。
そして、この ESG については、定義が乱立していました。標準的な定義は存在せず、評
価指標についても各評価機関側の判断で行われています。法令などに定められた基準もな
く、世界共通の判断基準がないというのが一定の認識です。
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)とは?
そこで登場したのが ISSB でした。ISSB は「International Sustainability Standards Board」
の略称で、「国際サステナビリティ基準審議会」と訳されています。企業が ESG を含む非
財務情報開示を行う際の統一された新たな国際基準を策定する機関として 2021 年 11 月に
発足しました。
ISSB による影響とは?
ISSB が設立されたことにより、これまで独自の非財務情報開示基準を作成していた 2 つの
機関が統合されています。CDSB(気候変動開示基準委員会)・VRF(価値報告財団)の
2つの機関です。ISSB が新しく作成する非財務情報開示基準は、TCFD(気候関連財務情
報開示タスクフォース)提言に加えて CDSB や VRF の基準を元に作成されます。機関の統
合により技術や人材、ノウハウが集約され、その結果これまでよりも包括的で質が高い情
報開示基準が作成されることが期待されています。また、コストの負担軽減も期待できま
す。複数の非財務情報開示基準に対応するには、対応する数の分だけ費用がかかります。
基準を統一化することで企業は基準に対応するためにかかるコストを削減することができ
ます。企業はまた、基準選びに悩む時間も省くことができます。
まとめ
ISSB により好ましい2つの影響が想定されました。特に統一基準が厳然と制定されれば、
各企業に及ぼす E である脱炭素化への活動は促進され、ますますカーボンクレジット 市場
競争が激しくなると予想されます。まだ基準決定はなされてないようですが、合わせて市
場の動向は要チェックですね。