初めに

太陽エネルギーを蓄えるということは、悪天候の日や暗い夜に備えて太陽光の力を保存しておくということです。赤道から遠く離れた場所に住む人々にとっては、特に冬の間は日照時間が限られるため、太陽エネルギーの貯蔵はより重要です。太陽エネルギーの貯蔵ソリューションには、単純な集光システムから最新のバッテリー/スマートグリッド技術まで、さまざまなものがあります。電力システムの種類にもよりますが、太陽エネルギーを貯蔵することは、電気料金を節約したい自宅所有者や事業者にとって、費用対効果の高い有効な戦略となり得ます。

基本的な太陽光発電の蓄電

パッシブソーラーシステムという言葉をお聞きになったことはありますか機械設備などを用いずに、建物の構造や建材などを工夫し自然の伝熱を利用して蓄熱・放熱を行うことで室内を快適な状態に保つシステムのことです。パッシブソーラーシステムは、誰でもその恩恵を受けることができます。太陽が照っていれば、設備や費用をかけずに光と熱を享受することができます。日没後の暖房用に、短期的に太陽熱を蓄えることも可能です。何世紀もの間、人々はそのように太陽エネルギーを利用してきました。



水やセメント、石などが日中に太陽の熱を吸収し、日没とともに気温が下がり始めると、その熱をゆっくりと放出するというものです。家の中の水桶やセメントブロックの壁、天然石の床は、一日中太陽が直接当たっていれば、夜間の暖房に役立ちます。パッシブソーラーを吸収するトロンブ壁で、夜間に居住空間を暖める建物もあります。

蓄えた太陽エネルギーが蓄熱材から放射され始めると、厚手のカーテンで室内の暖かさを保つことができます。室内を循環する対流が、夜のうちに家中に暖気を行き渡らせます。朝、このサイクルが新たに始まり、太陽光が水やセメント、石に熱エネルギーを再び吸収させるのです。

水は、同じ体積の他のほとんどの素材よりも多くの熱量を蓄える能力を持っています。コンクリートの約2倍の熱量を蓄えることができると言われています。

太陽エネルギーを長期保存するための電池

多くの家庭や企業では、系統連系型の太陽エネルギーシステムを使用しています。照明、暖房、家電製品の使用など、毎日の需要に必要な太陽光発電を行い消費します。余った電力は電力会社に売り渡すことで収入を得ることができます。また、太陽光発電の電力が需要に満たない場合は、電力会社から必要な電力を供給してもらい、その電力料金を支払います。

そこに蓄電池が加わることで、電力会社から電力を供給してもらう手間が省けます。余分なエネルギーを蓄えて、必要な時に使えるようにするのです。現在、太陽エネルギー用の蓄電池として最も普及しているのはリチウムイオン電池で、電池内の電気化学反応によってエネルギーを蓄えます。



リチウムイオン電池は、プラス側のコバルト酸リチウム電極とマイナス側の炭素電極が、穴のあいたプラスチックシートで隔てられています。その周囲をエーテルなどの電解質溶液が取り囲んでいる構造です。充電・蓄電時には、正電荷のリチウムイオンが電解液中を移動して負電荷のカーボンに付着し、充電・蓄電されます。そして、電力需要が発生すると、リチウムイオンは再び正極に流れ込みます。このイオンの急速な移動により、ニッケル・カドミウム電池の電圧と比較すると、比較的高い電圧を発生させることができるのです。

リチウムイオン電池は、従来のニッケル・カドミウム電池と比較して、太陽光発電の蓄電池としていくつかの利点があります。

  • 他のどの電池よりもエネルギー密度が高いため、より多くの電流を蓄え、供給することができる。
  • 軽量で持ち運びが容易。
  • メンテナンスが容易。
  • ニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池のような充電量の制限となるストレージ・メモリがない。
  • ニッケル・カドミウム電池が1ヶ月間に充電量の10%を自然放電により失われるのに対し、リチウムイオン電池は1ヶ月間に充電量の約1.5%しか自然放電による喪失がない。
  • また、リチウムイオン電池はカドミウムなどの有害物質を含まないため、リサイクルしやすいという利点もあります。

この電池は現在、太陽光発電の蓄電池として標準的に使用されています。また、テスラや日産などの自動車メーカーの電気自動車にも搭載されています。ボーイング787にもリチウムイオン電池が搭載されています。

一方、リチウムイオン電池のデメリットは以下の通りです。

  • ニッケル水素電池に比べ、コストが40%程度高い。
  • 過しやすく、発火する可能性がある。
  • 数年後に交換が必要

新たな太陽電池技術

リチウムイオン電池が理想的な太陽電池でないことは明らかですが、これまでの電池技術に比べれば優れています。再生可能エネルギーが世界中で普及するにつれ、太陽光発電をさらに実用化するための新しい蓄電方法が研究されており、いくつかの技術が有望視されています。

そのひとつが、水素エネルギー貯蔵です。グリーン水素は、貯蔵チューブの中で圧縮され、電気分解によって電気を保存し、需要に応じて再電化することができます。これは新しい技術ではありませんが、容量と効率を高めるために改良が加えられている貯蔵方法であると言えます。


圧縮空気貯蔵も、現在使われている技術で、大規模な太陽エネルギー貯蔵に対応できる可能性があります。太陽エネルギーはエアコンプレッサーの動力源となり、貯蔵モジュールに充填されます。圧縮された空気を放出することで、需要に応じて電力を再利用することができます。

リチウムイオン電池に代わるものとして、塩水蓄電池があります。環境に優しく、入手しやすい塩水でエネルギーを貯蔵する仕組みです。塩水電池は安全でリサイクル可能なため、最長で20年使用することができます。ただし、1回に蓄えられる電気量の半分しか放電できず、リチウムイオン電池に比べて蓄電容量が小さいのが難点です。

太陽エネルギーを大切に使うことは、蓄えることと同じくらい重要なことです。新しいスマートグリッド技術は、電力使用のピークを予測し、必要な時に確実に電力を供給することで、より効率的なエネルギー配分を可能にします。配電を自動化することで、エネルギー会社は電気の供給を確保しながら、無駄を省くことができるのです。

まとめ:太陽エネルギーの貯蔵方法は常に進化を続けています。

エネルギー貯蔵業界の先駆者たちは、再生可能エネルギーを貯蔵することが、この種のエネルギーを世界標準にするための最大の課題の一つであると認識しています。各国が二酸化炭素排出量ゼロの環境に近づくにつれ、急速な技術革新が継続的に行われています。