製鉄業界と日本製鉄

製鉄業界最大手の企業、日本製鉄をご存知でしょうか?

鉄は国家なり」という言葉があります。起源はドイツ帝国、ビスマルク首相の言葉に由来しますが、戦前、戦後の高度成長期にわたって製鉄産業の力は国家の力そのものでした。

鉄は高層ビルやマンション等の建築物の他、自動車等でも多く使用される等、製鉄業界はあらゆる産業に基礎素材の鉄を供給して経済を支えるとともに、輸出を通して海外情報の最先端に位置していました。

 その中でも国内最大手が日本製鉄です。会社HPによると2021年の日本製鉄の粗鋼生産量は4,946万トンで世界4位、次ぐ国内勢としてJFEスチールが2,625万トンで世界13位、次いで神戸製鋼所が675万トンで世界58位でした。

日本の粗鋼生産量は中国、インドに次いで第3位で、グローバルに見ても日本は上位に位置しています。

日本製鉄の経営の最重要課題である気候変動への対応

日本製鉄や製鉄業界も、世界の脱炭素の潮流から逃れることはできません。日本製鉄は、2021年、「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050~ゼロカーボン・スチールへの挑戦~」として、2030年に対2013年比で30%のCO2排出削減を目標に掲げました。その後、さまざまな技術革新や新技術を導入することを通じ、2050年にはカーボンニュートラルを目指す、といった二段構えで脱炭素に取り組んでいきます。

CO2実質ゼロ鋼材

日本製鉄は2022年9月、2023年度上期からCO2排出量が実質ゼロの鋼材の販売を開始すると発表しました。電炉の活用などによるCO2の削減効果を特定の鋼材に割り当てる方式(マスバランス方式)を採用することでCO2実質ゼロ鋼材の販売を実現します。環境に優しい鋼材を巡っては、神戸製鋼所もCO2排出量が実質ゼロの鋼材の販売を発表しています。同じくマスバランス方式を用いており、すでにトヨタ自動車のレース用車両で採用されています。

製鉄業界とCO2

実は製鉄業界はCO2排出量が多く、国交省のレポートによると国内産業界の排出量の約4割を占めています。

ところで、なぜ鉄を作るとCO2が出るのでしょうか?

鉄の原料である鉄鉱石は酸化した鉄です。これを、石炭を蒸し焼きにすることで製造される炭素の塊であるコークスを反応させることで、酸化鉄(酸素と結びついた鉄)のうち、酸素を炭素を結びつかせてCO2に変化させることで、酸化した鉄から酸素を取り除く(還元)のです。

まとめ

 CO2排出量の多い製鉄業界の脱炭素が進むことは国内産業界のCO2排出量削減にも大きく寄与することであり、今後も注目していきたいですね。製鉄業界で生産される電炉は、「鉄スクラップを原料」を主原料にしているので、リサイクルの意味でも、環境配慮とも言えるでしょう。 

 そして、一般生活者としても、脱炭素に向けてできることはあります。日常で何気なく使っている電気やガスも、一般家庭で消費されるまでのサプライチェーン(供給網)の中でCO2を排出しています。日常のちょっとしたところでエコに配慮した生活をすることで、お財布に優しいのみならず、環境にも優しい行動に繋がります。小さなことでも、できることから始めてみましょう。