はじめに

 日本でもiPhoneやMacなどのApple社製品愛用者は多くいらっしゃいますが、そのApple社は、サプライヤーと協力してApple社関連の製造の脱炭素化を加速し、世界中でクリーンエネルギーおよび気候変動ソリューションへの投資を拡大しようとしています。

 国連環境計画(UNEP)は、新たに発刊した報告書「Emissions GapReport 2022: The Closing Window – Climate crisis calls for rapidtransformation of societies」において、各国が気候変動対策の政策を強化しない場合、21世紀末までに世界の平均気温は2.8℃上昇すると警告し、気候変動対策はますます急務になっています。このままだと海から魚が獲れなくなってしまい、食卓に魚がなくなるのも時間の問題かもしれません。

 2022年10月25日、Apple社は、世界各地のサプライヤーに脱炭素の取り組みを早めるよう要請したと発表しました。

 Apple社は自社製品の生産や利用を通じて排出するCO2を実質ゼロに抑える「カーボンニュートラル」を2030年までに実現する公約を掲げていました主要国が掲げる目標を20年前倒しで達成しようという野心的な取り組みです。

Apple社のサプライヤーに対する脱炭素化の要請は強化

2015年Apple社は取引先に対し、Apple社関連の生産活動を通じて消費する電力を100%再生可能エネルギー由来にするよう呼びかけてきました。同社の製造コストの支出先の70%超に相当する213社が再エネ電力への完全移行を約束しています。

 今回の要請では、外部から購入する電力に加え、サプライヤーが自社の所有設備などから直接排出する温暖化ガスも削減するよう協力を求めました。Apple社の取引先は自前の工業炉やボイラーなどからの排出量削減を迫られることになります。

 Apple社のプレスリリースにはこのような文面があります。

Apple社の直接製造費の支出先の70パーセント以上に当たる200社以上のサプライヤーが、すでに、すべてのApple社製品の製造に風力や太陽光などのクリーン電力を使うことを確約しています。Corning Incorporated、Nitto Denko Corporation、SK hynix、STMicroelectronics、TSMC、Yutoを含む主要な製造パートナーは、すべてのApple社製品の製造に100パーセント再生可能エネルギーを使うことを確約しています。

~~中略~~

Apple社は、脱炭素化に対して緊急性を持って取り組み、一定の進展を遂げているサプライヤーと協力します。

 もはや、確約しないとApple社とは取引ができないという姿勢すら読み取れます。

カーボンニュートラルの達成に向けた進捗が遅い場合は、アップルとの取引機会が減る可能性もありそうだ。もはや、確約しないとApple社とは取引ができないとも読み取れます。

 同日、Apple社は、欧州で太陽光や風力発電の大型プロジェクトに投資し、30年までに年間3000ギガ(ギガは10億)ワット時の再エネ電力を新たに調達する計画も明らかにしました。欧州大陸で使われるすべての自社製品に低炭素電力を供給することを目指しています。

Apple社の脱炭素化は日本企業へも影響あり

 2022年4月のApple社の発表によると、同社に供給する部品や素材などの生産に使う電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうと約束したサプライヤーは同年3月までの過去1年で2倍近く増え213社になったとの事です。

 日本企業ではシャープやキオクシアが新たに加わりました。213社のうち、日本企業は全体の14%にあたる29社で、過去1年間で3.2倍に増えています。

 主要取引先について年ごとの進捗状況を追跡・評価する。温暖化ガスの排出削減に積極的なサプライヤーとの協力関係を強める考えも示した。

温室効果ガスの排出に対処するための新たな措置を取ること、および脱炭素に向けた包括的なアプローチを取ることを求めました。

 Apple社は、100パーセント再生可能電力で事業を行うなど、主要な製造パートナーのApple社関連事業を脱炭素化する取り組みを評価し、年ごとの進捗状況を追跡してます。Apple社は2020年以降、カーボンニュートラルなグローバルな企業であり、グローバルサプライチェーンとすべての製品のライフサイクル全体でカーボンニュートラルを達成するという野心的な目標に向けて注力しています。

森林保護プロジェクトも

 Apple社は、2021年4月に森林の保護により二酸化炭素を除去しつつ、金銭的なリターンを生む「Restore Fund(再生基金)」の設立を発表しています。Apple社は今回、同基金による3つの新しいプロジェクトを発表しました。  Restore Fundは、環境保護団体コンサベーション・インターナショナルと投資銀行Goldman Sachsと提携し、ブラジルとパラグアイの3つの質の高い森林管理に投資し、10万エーカー(40万4700平方メートル、東京ドーム約0.9個分)の天然林、草地、湿地を保護しています。

米国ではiphoneがクリーンな電力を選んで充電

アメリカでは、iOS16.1の公開にあわせて「クリーンエネルギー充電」が利用可能となりました。同機能をオンにしておけば、iPhoneが充電が予想される時間帯の電力源を調べて、太陽光や風力などのクリーンエネルギーが使用される時間帯に充電するよう、充電パターンが自動で最適化されます。

おわりに

 如何でしたでしょうか。世界のあらゆる地域で使用されているApple社製品ですが、その取引先も世界中に広がっています。そういった中、Apple社の取引先はもはや脱炭素の取り組みから逃れる事はできず、脱炭素から遅れる事はApple社から容赦なく取引を切られてしまう事になります。

 もはや、気候変動対策や脱炭素は、Apple社のような巨大企業においても、その取引先においても、極めて重要な経営課題となってきています。そしてそのApple社は、投資家などのみならず、最終消費者であるユーザーの目線を意識している事も感じ取れます。

 国境や企業の大小に関わらず、脱炭素を推進していく事は待ったなしの状況です。身近なできる事からアクションを起こしていきたいですね。また、エナジーシェアーズでは、環境に貢献するクリーンな投資を実現し、投資家に高利回りで還元する投資プラットフォームです。ぜひチェックしてみてください。